筑波大学
オリンピック・パラリンピック総合推進室

Office for the Promotion of Olympic and Paralympic Activities

ニュース

2021.10.21

「パラメダリストになって」ゴールボール女子 高橋利恵子さんの挑戦

2021年9月3日、東京2020パラリンピック競技大会のゴールボール女子、世界ランキング3位のブラジルとの3位決定戦―。「守備の要」として出場した本学障害科学学位プログラム2年の高橋利恵子さんは、銅メダル獲得を決め、表彰台で安堵の表情を浮かべました。

 

あれから1か月半、パラリンピアンで銅メダリストになった高橋さんに2021年10月19日、オリンピック・パラリンピック総合推進室がインタビューしました。新型コロナウイルス感染症の影響で延期になったパラリンピックに向けて、前向きに、ひた向きに努力を続けた日々や学業とパラアスリートの両立、パラリンピックを終えた現在の心境や今後のことなどについて、率直に語っていただきました。

東京2020パラリンピック競技大会にゴールボール日本代表として内定したのは、大会の延期が決まる3日前でした。延期が決まった日は、高橋さんが本学の人間学群障害科学類を卒業する日でした。「複雑な心境での卒業式でした」と振り返ります。

 

パラリンピアンにとっても例外ではなく、“延期”という決定に戸惑う選手は多くいました。にもかかわらず、高橋さんは、「1年の延期は、もっと成長できるチャンスだと思った」といいます。高橋さんは日本代表の中では、国際舞台での経験が少ない方で、代表に選ばれたとはいえ、代表を外れる可能性のある「見直し対象選手」だったそうです。したがって、代表決定時に嬉しさと同時に感じたのは、「このままでは本番で何もできない」という不安でした。

 

1年延期が決まってから2か月間は、チームメートとの練習はできず、試合の見通しも立たない状況が続きました。それでも、胸にしていたのは、「普段、やったことのない練習や取り組みをやろう」という決意でした。

 

生まれつき視覚障害があります。光は感じられ、コントラストがある場合の文字は読めることはありますが、普段は点字を使用します。自宅周辺では散歩こそできますが、走ることはしませんでした。しかし、友人にサポートを頼み、あえて、自粛期間中はランニングに挑戦しました。国内はもとより、海外選手との練習試合は到底、不可能でしたが、自宅で映像を繰り返し見て、聞いて、イメージトレーニングに明け暮れました。倒れながら行う守備では、体幹の強さが求められるといい、体幹強化のためのトレーニングにも励みました。

 

 

4月から本学大学院に進学し、新しい学習環境への適応においても、忙しい日々を送りながらの選手生活でした。しかし、6月から再開された味の素ナショナルトレーニングセンターでの日本代表合宿には、パラリンピックへの気持ちを切らさないまま、臨むことができました。

 

「守備の要」として、日本代表で戦える手ごたえを掴み始めていましたが、その一方で、常に、パラリンピック自体が延期ではなく、“中止”になる可能性は消えませんでした。それでも、高橋さんは、「パラリンピックが東京大会で中止になっても、その後のパリ大会はあるはず」と思い、「自分が今まで以上に強くなることに集中した」といいます。「もっと強くなりたい。そして、世界の競合と渡り合いたい。その自分を見てみたい」という気持ちを持ち続けました。

 

そしてついに開幕したパラリンピック。高橋さんらゴールボール女子日本代表は予選を突破して、決勝リーグに進出、見事に銅メダルに輝きました。しかしながら、高橋さんは余韻に浸る間もなく、日本代表と自身の今後の課題について、「守備の見直しが必要」と言い切ります。体を横倒しにしながら、体を張って、ゴールを死守するのがゴールボールの魅力の一つですが、今回のパラリンピックでは、その横になった高橋さんの体の上をボールが通過し、ゴールされたシーンが何度もあったそうです。「強いシュートを打たれても、乗り越えられないような、守備が必要」といいます。

 

 

今後も、勉学にも励み、将来は「特別支援学校の先生になりたい」そうです。ゴールボール選手としての強さへの飽くなき挑戦と、教員志望というのは、一見すると、まったく別の道を歩んでいるような感じがします。しかし、高橋さんは「相互作用が生まれている」と説明します。特に今回メダル獲得を機に、選手として子どもたちへの教育的な影響を感じたといいます。

 

「自分がゴールボールと出会って、障がいがあっても、やれることがたくさんあると知った。人生って楽しい。障がいのある子どもたちに、もっと私の選手としての姿を知ってもらって、自分の人生の選択肢や可能性を広げてほしい」

 

パラリンピックへ出場したからこそ、そしてメダルを獲得したからこそ、より多くの障がいのある子どもたちに伝えられることがあります。もちろん、障がいのない子どもたちにも伝えたいことは、たくさんあります。「障がいがあっても、普通の人なんだよ」。ゴールボールは障がいの有無に関わらず、「アイシェード」で目隠しをすれば誰もが平等になれます。目指すのは、「障がいのある人とない人が自然に混ざり合う社会の実現」だそうですが、その手段として、ゴールボールがあると認識するようになってきたといいます。

 

これからも、大学院生とパラアスリートを両立させ、力強く、ひた向きに努力する高橋さんの姿が想像できます。パリ2024大会に向けても、応援をよろしくお願いします。

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